SENTIMENTAL CITY ROMANCE
50周年にふさわしくゲストも続々!
暖かな笑顔に満ちたツアーファイナル
センチメンタル・シティ・ロマンス 50周年記念ライブレポート
2023年10月5日 渋谷 CLUB QUATTRO
今から50年前の1973年に名古屋で結成されたセンチメンタル・シティ・ロマンス(以下、センチ)は、日本のシティーポップの草分け的存在。そして半世紀もの間、解散や活動休止をせずにずっと走り続けているバンドだ。そんな彼らの結成50周年ライブのツアーファイナルが2023年10月5日、渋谷クアトロにて開催された。
Text&Photo:Backy☆OSAKA
40周年ライブも開催した「センチの聖地」
渋谷クアトロで、ふたたびの記念ライブ
2023年10月5日。この日はセンチのファンにとって記念碑的な1日になったことだろう。大阪・名古屋・新潟・石川を巡った後、ツアーファイナルが開催されたのは、東京・渋谷のCLUB QUATTRO。ここは彼らの40周年記念ライブも開催された場所であり、ファンにとっても思い入れの深いライブハウスだ。記念すべき50周年ライブの集大成となるこの日のライブには、スペシャルゲストも多数集結。センチのポップなサウンドに、どのような彩りを添えてくれるのか期待が高まる。
彼らのデビュー曲『うちわもめ』がバックに流れ、メンバーがステージに登場するとさっそく会場中が手拍子で溢れかえる。会場横のスクリーンには彼らの50年間の軌跡がスナップ写真で映し出され、ライブのオープニングを演出した。
この日の1曲目は『カモン・ベイブ』。ギターのイントロに続いて、キーボード越しに細井豊の「ようこそ!」の声があがり、センチならではのゴキゲンなシティーポップがあっという間に会場を彩った。続いて初期の代表曲『うん、と僕は』を細井が歌い上げるとメンバー紹介へ。この日はオリジナルメンバーに加え、元メンバーの本多正典がパーカッションを担当。同じく元メンバーの告井延隆もギター&ボーカルとしてステージに立った。
「50周年ということでいろいろ考えてきたんですけど、あっという間にこの日が来ましたね。今日はゆっくり聴いてくださいね」。細井のおだやかなMCに続いたのは、ベースの瀬川信二が歌う「あの娘の窓灯り」。告井はこの曲に合わせてペダルスチールギターを奏でたのだが、その独特のフォルムが「編み機」に似ているという冗談も飛び出し、会場はホッコリとしたムードに。「今度は野口くんに歌ってもらおうかな」細井がドラムの野口明彦に声をかけると、会場のファンからも「待ってました!」の声があがる。「うるさいなぁ」と照れつつも、野口は自身の代表曲となる『内海ラブ』を披露。
さらにここで初代ベーシストの加藤文敏が登場。ステージに立った瞬間、彼の頭には40周年記念ライブの日がよぎったようで「クアトロだね」と感慨深げに一言。『暖時(くつろぎ)』で和ませてくれた後には、メキシコへ向かうドライブ中に「地図が踊る」という歌詞が生まれたエピソードとともに『マンボ・ジャンボ』を歌い上げた。
初代ベーシストの加藤文敏(中央)
細井と握手をして加藤がステージ袖へ戻ると、新たなゲストとして湯川トーベンが呼び出される。「トーベン!」観客からも歓声が上がり、中野督夫が作詞作曲した『ムーンシャイン&サンシャイン』をしっとりと、かつ熱く歌い上げた。ここでライブ前半となる第1部が終了。ここまでのステージはまるで同窓会のような雰囲気だったが、ステージ上のメンバーそれぞれが、ライブならではのセッションを満喫しているのがひしひしと感じられ、見ていてとても心地よい。
センチとは戦友ともいえる間柄の湯川トーベン(中央)
ステージはまるでパーティールーム
第2部も更なるゲストが続々と!
第2部のオープニングは、告井のボーカルで『歌さえあれば』からスタートするも、2曲目からは早速ゲストが登場。まずはシンガーソングライターの佐藤嘉風(かふう)を招いての『金田一耕助の冒険:青春編』。細井曰く「ステージではほとんどやったことのない曲」とのことだが、ゲストボーカルを招くことで鮮度の高いパフォーマンスを楽しませてくれた。
第2部最初のゲストとなった佐藤嘉風
続いては現メンバーのギタリストである種田博之が、自身で作った『人形町へ帰ろう』を披露。細井が歌う『時は流れても』を挟んで、同じく現メンバーのベーシスト瀬川信二も『ナイス・ショット』でボーカルを披露する。この流れでわかるように、バンドメンバーの一人ひとりが皆ボーカルも務めるのもセンチならではの魅力。なお、瀬川が歌った『ナイス・ショット』は、かつてのメンバーであり故人となってしまった中野督夫の生み出したファンキーな楽曲だ。名古屋弁のカウントで始まる遊び心に満ちたこの曲は、愛され続けながら今でもしっかりと歌い継がれている。
50周年のお祭りはまだまだ終わらない。ライブが佳境を迎える中、満を持して登場したのはEPO。さらにギタリストの佐橋佳幸と、トロンボーン奏者の佐野聡がステージに立ち『Go On My Way』が披露された。「いくつになっても自分の音楽を楽しめるって本当に幸せですよね!」自身が歌いつつける喜びとともに、ずっと活動を続けるセンチへのリスペクトを込めてEPOからは祝福コメントが送られた。そんなお祝いムードのテンションそのままに、EPOはパンチの効いたアレンジに生まれ変わった代表曲『う・ふ・ふ・ふ』を披露。「このアレンジもここで披露したかった」と細井も大満足の様子。会場中がまるでパーティー会場になったかのような多幸感で満たされた。
シンガーソングライターのEPOとトロンボーン奏者の佐野聡
熱気の冷めやらぬ中、ステージ上は再びレギュラーメンバーを残し、第2部もいよいよクライマックスへ突入。「ライブも佳境に入ってきましたが、だんだん最近の曲に入っていきます」。細井のMCを合図に始まったのは、彼のボーカルによる『フルサトオモフ』。告井が響かせるギターに、種田のギターカッティングが重なりゴキゲンなカントリーソングが会場にこだまする。第2部のラストは、中野督夫が残した傑作『ハイウェイ・ソング』のカントリーアレンジ。「今回も上越へ行って、石川に行って、突っ走ってきました!」告井のボーカルがハイテンションなアレンジサウンドに溶け込んで会場を魅了した。
ゲスト総出演のアンコールでは
中野督夫のギターサウンドも復活
「まだ頑張りますので宜しくお願いします!」細井の決めセリフで第2部が終わったものの、メンバーが舞台袖へ去ろうとする前から、会場内には熱いアンコールの手拍子が鳴り響く。そんな熱気に圧倒されたかのように、あっという間にメンバーはステージに逆戻りしてアンコールがスタート。
アンコール1曲目は、センチのデビュー曲であり原点となる『うちわもめ』。続く「雨はいつか」では、細井がこの日のゲスト全員をステージへ呼び出した。その中には、元メンバーの近藤文雄もいつの間にか混じっている。さらにここでファンの胸を熱くしたのが、2021年に惜しくも逝去した中野督夫の愛用ギターの音色。「督夫さんのギターを持ってきたんで弾いてくださいね」。細井のかけ声に応え、中野のギターを奏でたのはゲストの佐橋佳幸。会場中が「雨はいつか」のフレーズを口ずさむ中、佐橋の弾く中野のギターサウンドが会場に響き渡り、ファンの胸を熱くたぎらせた。
故・中野督夫の愛用ギターを響かせる佐橋佳幸(中央左)
この日のゲストが全員総出で盛り上がったアンコール
細井がゲスト一人ひとりに礼を告げ、ステージが締めくくられようとするものの、アンコールの拍手はまだまだ鳴り止まない。そんな熱気を鎮めたのは、近藤文雄も含めたオリジナルメンバーによる「風景」。細井は最後に、ここに足を運んだ観客たちにもしっかりと感謝を告げステージを後にした。
走り続けて半世紀。しかし、彼らはその重みに気負うことなく50周年の節目を迎えていた。そして、これからも変わらず走り続けていくことも約束してくれた。日本最古の現役ロックバンド、センチメンタル・シティ・ロマンスは、まだまだこのまま走り続けてくれそうだ。
センチメンタル・シティ・ロマンス 50周年記念ライブ
半世紀ロック コンサート セットリスト
第1部
1.カモン・ベイブ
2.うん、と僕は
3.あの娘の窓灯り
4.内海ラブ
5.暖時
6.マンボ・ジャンボ
7.ムーンシャイン&サンシャイン
第2部
1.歌さえあれば
2.金田一耕助の冒険,:青春編
3.人形町へ帰ろう
4.ロマンス航路
5.時は流れても
6.ナイス・ショット
7.Go On My Way
8.う・ふ・ふ・ふ
9.フルサトオモフ
10.ハイウェイ・ソング
EN.
1.うちわもめ
2.雨はいつか
3.風景